こんにちは。でこぺんです。
今日ご紹介する一冊は、松素めぐり著『保健室経由、かねやま本館』です。
あらすじ
サーマこと佐藤まえみは高校生。新潟から東京に越してきて、東京デビューを喜んだのも束の間、友達との関係がぎくしゃくし始めます。
悩むサーマを保健室へ招く山姥風の養護教諭。保健室の床の穴の奥には、湯気に包まれた世界が広がっていて…。
きちんと休むことの大切さ
美しい女将の小夜子さん、元気いっぱいの案内人キヨ。湯治場には、いつもやさしい時間が流れています。
サーマが涙を流しても、無理に励ますでも慰めるでもなく、「泣きたいときは泣いていい」と言う小夜子さん。湯上りには、からっぽの体に染みるおいしい食事を出してくれます。
どんな時でも定刻の鐘がなれば、一瞬で湯治場から元の世界に戻される。一見きびしいこのルールですが、独り立ちに向けて背中を押してくれる、ただ甘いだけではない優しさがそこにあります。
お湯の効能に癒される
湯治場では、「お湯に呼ばれる」の言葉の通り、そのときの自分に必要なお湯が現れます。あたたかいお湯にゆっくりとつかりながら、サーマたちは自分自身を見つめ直していきます。
私も、夜自宅の湯舟につかりながら「今日のお湯の効能はなんだろう」なんて想像してみたりします。
乗り越えて、大人になる
かねやま本館のお湯に呼ばれるのは、心に悩みを抱えた子どもたち。
お湯につかって、自分自身と対話を重ねて、自分なりの折り合いの付け方を見つけていきます。自分だけが悩んでいるのではないと知り、あたたかい湯治場を心の拠り所にしながら、やがて湯治場を卒業して日常での一歩を踏み出します。
迷い考えながら自立していく姿に、共感できる部分がきっと見つかると思います。
おわりに
『保健室経由、かねやま本館。』は、第60回講談社児童文学新人賞を受賞しています。自分の心と向き合い、自分なりの方法で世界を生きていくことを学べる、思春期のお子さんにも、かつて思春期だった大人にもおすすめの一冊です。
私たちも、疲れたら立ち止まって、きちんと休んで、そしてまた頑張っていけたらいいですね。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
続編も出ています