世界中の誰もが知っているキュートな青虫といえば、はらぺこあおむし。
作者のエリック・カールさんは、91年の生涯のなかで40冊もの美しい絵本をつくりました。

この記事では、エリック・カールさんの生涯や作品作りの技法、おすすめの絵本作品についてお伝えします。
エリック・カールの生涯


エリックカールさんは1929年、アメリカのニューヨーク州に生まれ、ドイツで育ちました。シュツットガルトの造形美術大学を卒業し、世界的な人気絵本作家として活躍します。
代表作「はらぺこあおむし」日本語版が出版されたのは1976年。その後も精力的に絵本を作り続け、最後の絵本である「ありえない!」を出版したのち、91歳で生涯を閉じました。
エリック・カールの技法「コラージュ」


エリック・カールさんといえば、一度見たら好きになってしまう印象的な絵。これはコラージュという手法で描かれたものです。
コラージュとは
薄紙にアクリル絵の具で色をつけたものをストックしておき、作りたいものの形に切り抜いてイラストボードに貼っていくという手法です。
同じ赤でも、同じ色合いの赤はまたとないのがカールさんの絵。深みのある美しい色は、手間を惜しまない作業から生まれたのですね。
カールさんの本の日本版はすべて偕成社から出版されています。偕成社によるインタビューで好きな色を聞かれたカールさんは、全部の色が好きだと答えていました。



どの色がというよりも、色の組み合わせが大切なのだそうです。
エリックカール おすすめ作品9選
エリック・カールさんの絵本の中から、読み聞かせにおすすめしたい9冊を選んでみました。
パパ、お月さまとって!
おすすめ年齢 2歳ごろ~
お月見の季節に読みたくなる本。
「お月さまとって!」娘にお願いされたパパは、長い長いはしごをのぼって月に会いに行きますが…。
左右に、上下に大きく伸びるしかけページで、そこに夜空が広がっているように楽しむことができます。月の満ち欠けについても知ることができる、お話会などでも大人気の一冊です。
おほしさまかいて!
おすすめ年齢 5歳ごろ~
「パパ お月さまとって!」とあわせて読みたい絵本。ストーリーは少し大きい子向けかなと思います。
主人公はひとりの絵描き。
はじまりはまだ少年です。「おほしさまかいて!」と頼まれて絵を描きますが、その美しいこと。
星や太陽、木や草花。たくさんのものを描くうち、少年だった絵描きもやがて年をとり…。
日本語版の訳者は、「100万回生きたねこ」の作者でもある佐野洋子さんです。



8角形の星の描き方も出てきますよ。
ことりをすきになった山
おすすめ年齢 5歳ごろ~
ごつごつの岩だらけ。こんな山では動物も植物も生きられない。だから山はいつもひとりぼっち。
ある日、そこに一羽のことりがやってきて、歌をうたいます。心を通わせた山とことりは、ある約束をします。
この絵本はカールさんが絵を担当。文章は、文化人類学者のアリス=マクレーランさんです。長い年月を重ねて変化していく山の姿と、受け継がれるいのちの力強さが表現されています。
ごきげんななめのてんとうむし
おすすめ年齢 5歳ごろ~
朝5時。ごきげんななめのてんとうむしの登場です。
「ぼくとけんかしたくないか」とふっかけては、たたかわずに逃げていくてんとうむし。
はち、くわがたむし、さらには、ゾウ。
さんざんけんかをもちかけて、最後に帰ってきた場所は…?
お日様のうつろいと時間が分かる、楽しいしかけページあり。



いばりんぼで、でもかわいくて憎めないてんとうむしくん。
イヤイヤ期の子どもたちにも重なる部分があるような…。
ね、ぼくのともだちになって!
おすすめ年齢 2歳ごろ~
友だちがほしい、小さなねずみくん。
いろいろな動物のしっぽに向かって「ね、ぼくのともだちになって!」と語りかけます。
しっぽの主が誰なのかは、ページをめくってのお楽しみ。
なかなかいい返事をもらえないねずみくん。
すてきな友だちに巡り合えるでしょうか。
できるかな?あたまからつまさきまで
おすすめ年齢 2歳ごろ~
ペンギン、きりん、ワニ。
動物たちの動きをまねっこ、できるかな?一緒に体を動かして楽しめるまねっこ遊びの絵本です。
あたまをくるーんペンギンさん。
首をぐいんときりんさん。おつぎは何かな?
遊んでいるうちに、あんな動きこんな動きもできるようになっちゃいますよ。
ホットケーキできあがり!
おすすめ年齢 3歳ころ~
「きょうは、でっかいホットケーキがたべたいなあ」
さっそく作りはじめるジャックですが、そう簡単にはいきません。ホットケーキミックスを混ぜて… ではもちろんなくて、最初の仕事はまさかの小麦の刈り取り!
それから小麦を脱穀して、牛のお乳をしぼって…
ホットケーキってこうやって作るんだなあ。食べ物が口に入るまでには長い道のりがあるのですね。
大人も楽しく学べる絵本です。
はらぺこあおむし
エリック・カールさんの代表作。世界一愛されているあおむしくんですね。
あおむしが生まれたのは、あたたかな日曜日の朝。もう、おなかはぺっこぺこ。
あおむしくんが食べたのは、月曜日、りんごをひとつ。火曜日、なしをふたつ。それからそれから…。
穴のあいた仕掛けページと鮮やかな色彩は、小さな子どもにページをめくる楽しさを教えてくれます。
食べることは、生きること。さなぎがちょうちょになる前には、ふかく眠る時間があること。大人になった今読むと、カールさんからのメッセージが心にじんわり染みる一冊です。



私の絵本好きの原点ともいえる一冊です。
ありえない!
おすすめ年齢 3歳ごろ~
『みなさん、あっとおどろくショーにようこそ。』
表紙のバナナアヒルをスタートに、ありえないことが次々起こります。
カンガルーのポッケに入った男の子。人の散歩をする犬。少々ぴりりと風刺が効いたありえない世界を、どうぞお楽しみください。



エリック・カールさん最後の本。90歳をすぎて作ったとは思えないパンチが効いたタッチです。
おわりに


絵とことばの両面から、美しく世界を描き出すエリック・カールさんの絵本。
登場するのは自然の風景や動物、小さな生きものたち。たとえば石ころひとつであっても、ていねいに塗り重ねられた色形から、カールさんの愛のまなざしを感じることができます。
絵本をとおして子どもたちが、カールさんの見ていたやさしい世界に触れることができたらいいなと思います。



最後まで読んでくださってありがとうございました。
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